『新型コロナウイルスと音楽業界の現状について。』

SCHOOL OF LOCK!

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聴取期限 2020年3月27日(金)PM 11:27 まで



山口「このあいだ、Instagram Liveが終わって、原くんっていうNFのメンバーと、マネージャーのサバちゃんと一緒に軽く深夜飯を食べて、編集どうするとかの話をして、終わったのが5時とかだったんですよ。で、6時に布団に入って、疲れた……と思っていたら、めちゃめちゃ具合が悪くなったんですよ。やばいぞと。これがコロナだったら……。なんか、体調が……例えば微熱とか出ただけでも、コロナかなって思うようになっちゃっているじゃないですか。周りで熱が出たっていう人がいると、えっていう気がしますよね。だからちょっと怖いなって気がするんですけど。僕らはツアーがコロナで延期しているじゃないですか。今、ミュージシャンとして、国の指針と業界全体の意見みたいなものを双方みている立場にいるんですよ。音楽業界的も独断で走るわけにはいかないじゃないですか。国がどういう方針でいくのかっていうのを見定めながら有識者会議みたいなものをやって、ライブは実際行えるかどうか、いつのタイミングがいいのかっていうのを話し合っている状況なんです。」

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山口「ただ……ひとつ忘れられているなっていうのは、ミュージシャンの気持ちだなって。業界全体として「じゃあライブやりましょう!」ってなったとしても、コロナの不安がある中で頑張ってファンの子たちが観にきてくれて、そこで僕らが歌うわけじゃないですか。そのミュージシャンの気持ちを置いていかれると、ステージで歌うのは僕らだから……そこの意見を吸い上げてくれないと。ただ事務的に、やる、やらないの判断を勝手にされても、そこにモチベーションを持っていくにはいろんな条件が必要になってくるんだろうなって思うんですよね。ステージの上で歌うっていうのは、全員に対して自分の祈りを届けることと一緒なので、来てくれてありがとうっていう気持ちの中に、コロナの中で来てくれてありがとう、っていう気持ちがちょっと入るわけじゃないですか。そのモチベーションって僕らにとっては未知だから。果たして良いライブができるかどうかって、それは分からないんですよ。だから例えば、予防とか、世の中の動きとしてこうっていうのが情報としてインプットされた状態でステージに立たないと、ただ、『はい、やってください。』って言われても、ちょっとちょっと……ってなるじゃないですか。」

職員「そのことを考えている一般の人っていないかもしれない。やりたいでしょ?っていう風にしか思っていないかもしれない。」

山口「もちろんやりたいですよ!それはやりたいけど、状況によるじゃないですか。かといって、このコロナの影響で経済が止まるっていうのも非常に大問題だと思うんですよ。それは音楽業界だけの話じゃなくて、日本全体として。ひょっとしたら世界全体としてかもしれないんですけど。だから、僕ね、ここの議論は本当に慎重にしないといけないと思っていて。例えば、コロナウイルスに感染して亡くなられた方の命と、経済が悪くなって、それに伴って亡くなられる方もいるわけじゃないですか。これは、どっちを優先するべきかを議論しちゃいけないんですよ、命に対して。だから、ミュージシャンとして、音楽業界の人間としてじゃなくて、ひとりのミュージシャンとしてやらなきゃいけないなと思うことは、コロナウイルスでライブができなくて、それが沈静化してライブができるようになるっていうのをただ待つんじゃなくて、その状況でもどう音楽を届けるかとか、どういうビジネスがあるのかとか、どんなリスナーとの繋がり方があるのかっていうのを考えるタイミングなんですよ、これは。それを絶対に怠ってはいけないなと。」

職員「サカナクションは今、過去のライブ映像を配信しているじゃないですか。」

山口「そう。僕らは、今コロナの影響でライブが観られないと。だったら、ライブを観てもらうチャンスだと思うんですよ、逆に。観たいっていう気持ちが高まって、枯渇しているときにライブを観てもらおうって。過去にリリースされた映像を配信しているんですよ。もちろん、Blu-rayやDVDを持っている人もたくさんいる作品なので、観たことがある人もたくさんいるんですよ。リリースされているものだから、それを有料で配信するっていうことは、僕は絶対にしたくないんですよね。」

職員「まず、買っている人がいるしね。」

山口「はい。今は、時間軸を追って放送しているので、サカナクションの流れが分かってくるから、ストーリーが分かるじゃないですか。音楽を好きになるのって、そのストーリー……今に至るまでの経過が分かるとファンになってもらえるから、僕らはそれをやっていると。」

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山口「で、実はこの間、新しいのを立ち上げたんですよ。"NICE ACTION"ページっていうのを作って。動画とかでよく、Super Chatとか、課金するのがあるじゃないですか。僕、あの課金システムっていうのは音楽にすごく不向きだなと思っていて。僕は、音楽っていいなって思って衝動的に課金するものじゃない気がしているんですよ。それを受けて、すごく自分が救われたとか、楽しかったとか、ライブが全部終わった後に感じるもののような気がするんですよね。その瞬間にバチッと感じてリアクションするものじゃない気がするというか。応援したいなとか、"NICE ACTION"してくれたなってとか……例えばそれは、YouTubeでライブ配信をするとか、Instagram Liveをするとか、テレビに出たりとか、こうやってラジオで話すとかでも、僕はいろいろアクションしているじゃないですか。そういうときに、『一郎くんいいこと言ってくれた』、『私の気持ち代弁してくれた』、『いい曲作ってくれた』、『テレビで遊んでくれた』、『Instagram Liveを深夜にやってくれてほっとした』とか、そういうときに、一個落ち着いて、やっぱり助かったなとか、もっと応援したいなって思ってくれた人は、サカナクションのWEBサイトにわざわざ行って、NICE ACTIONページのNICE ACTIONボタンを押すと、一口100円で支援してもらえるようなシステムを作ったんですよ。」

職員「え!すごい。それが始まるんですか?」

山口「もう始まっていて、この間の配信からやったんですけど。やっぱりみんな応援したいっていう気持ちだったり、ありがとうっていう気持ちで、一旦落ち着いて、それでも支援したいっていう人が支援できるシステムにしたんですよね。だから、よっぽど応援したいっていう人だけがたどり着けるシステムなんです。」

職員「あー、それはでも、そこで利益がどうこうっていうのとは違うサイズ感ですね。」

山口「そう。だから、そこで貯まったもので、『今回のライブのLEDパネル代にしました』っていう風にできるじゃないですか。LEDパネルって1枚に1000万くらいかかるんですよ。いくら貯まるとスピーカー1発とか。」

職員「事業報告みたいなことね。『スピーカー増えました!』とか。」

山口「そうそう、それができるんですよ。例えば、スタンド席にスピーカーが置けるようになって、スタンド席の人までいい環境でライブを観られるようになったのはみんなの支援(NICE ACTION)のおかげですって……繋がっていく気がするんですよ。だから僕は、衝動的な課金っていうよりは、そういった音楽特有の、感じたものを一旦冷静に捉えた上で、それでも応援したいっていう人の気持ちが届くようなものを作るべきかなって思って。」


山口「でもこれって、いちミュージシャンがやるべきことじゃないんですよ、本当は。業界がやるべきなんですよ。例えばライブが飛んで、そのために頑張ってくれているミュージシャンがいて……今は、ミュージシャンがライブ配信とかスタジオ配信とかしているじゃないですか。それに対する気持ちを、音楽のためにって支援をして、それを音楽業界が分配すると。本当に小さい事務所は潰れちゃったりするし、レーベルやマネジメントだけじゃないんですよ。トランスポートっていって、機材を運ぶトランスポート屋さんなんて、今まるで仕事がないから潰れちゃいますよ。あと、仕出し屋さんとか。どこにどういう負担がかかっているのかって、業界の人しか分からないじゃないですか。そういうところに分配するっていう組織の体をなしてくれていないと、本当は良くないと思うんですよね。僕は、いちミュージシャン個人でやっているけど、それはもっと大きい組織でやるべきなんじゃないかと。業界はこういった活動を本当はもっとサポートすべきだし、ミュージシャンにできることってここくらいしかないんですよ。だからそれをやるためにもっとサポートしてくれたらいいなと思うし、僕らの仲間は徹夜して作業をしてくれたりとか、この期間にInstagram Liveで配信したりするのも朝まで付き合ってくれて、サイトを作るのに、今も寝ないで編集したりして頑張ってくれているわけですよ。それをもうちょっとサポートして欲しいなって思いますよね。気持ちが空回りするのだけは……一番問題だと思うし。コロナウイルスと経済っていうもの、どっちも大事だから。どっちの命も比較しちゃいけないなっていうことを、今日はミュージシャンとして話しておこうと思って。」

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山口「音楽業界って、例えば、舞台監督さんって、どこかに所属している人ももちろんいますけど、ほとんどフリーランスの人ばっかりなんですよ。今回1ヶ月間ツアーが止まっているじゃないですか。っていうことは、今月、給料ないんですよ。これは個人で給料がないと。トランスポーターさんっていうのは、機材を運ぶ人じゃないですか。楽器が運べないんだったら他の荷物を運べばいいじゃないって思うんですけど、楽器専門なんですよ。楽器っていうのは結構特殊なものなので、楽器を運ぶトランスポーターさんは、楽器しか運ばないんです。扱い方があるから。でも、僕らはライブをやらないから、トラック出せないじゃないですか。っていうことは、1ヶ月間丸々仕事がなくなって、しかも、トラック屋さんって何人も人を雇っていて、トラックも何台もあるじゃないですか。それが全部止まるんですよ。」

職員「しかも、いつまでか分からないんだもんね。」

山口「これって、ある種、大きい組織だったり、母体が大きいとまだ耐えられるかもしれない。1ヶ月だったら。これが2ヶ月、3ヶ月になると、大きい会社もマジでやばいぞってなると。なんだけど、リスナーの方たちや音楽を好きだっていう人たちって、まずミュージシャンが心配になると。次に、あっても、マネジメント……その先にどんな人が関わっているかってなかなか意識がいかないじゃないですか。でも、僕らからすると、自分たちよりも、僕たちを支えてくれている人たちが疲弊していってライブができなくなるんじゃないかっていう怖さの方があるんですよ。もちろん、コロナウイルスの感染拡大がないように封じ込めておこうと、経済のこともあるけど今はとりあえず拡がらないようにしようっていう考え方も正解なんですよ。なんでかっていうと、例えばライブに行って感染して、おじいちゃんおばあちゃんと住んでいる人が家に帰っておじいちゃんおばあちゃんが感染したり、赤ちゃんが感染したりして、もし亡くなられたりしたら、僕らは責任を取れないですから。これは、どっちも深い。どっちも大事なんですよ。」

職員「そうだね。」


山口「この八方塞がりの中で、ミュージシャンとして、さあ、コロナいなくなれ、業界がライブができるようになんとかしろ。って腕組みをしているだけじゃ絶対にだめじゃないですか。新しいシステムのライブを開発したり、そこでビジネスができる方法を見つけたら、そこに召集できるじゃないですか。人を呼ばなくてもできる方法っていうのを考えると。そういうアイディアを頑張って出すための猶予期間だって思っておかないと。ただ待っているだけだと、文句を言っているだけだと絶対にだめなんですよ。僕が言っていることって音楽業界の話だけど、全体に言えるじゃないですか。」

職員「そうだね。パン屋さんだったら……なんでもそうだよね。」

山口「みんなが理解できるはずなんですよ。だから、みんながこれを理解して、音楽っていう崇高なものとしてみないで、このタイミングで初めて音楽ってどういう風にできているのかっていうのを理解した上で自分にができるのかとか、それを分かっている人たちがどんな活動をしているのかとか……みんなに考えてもらう時間になってほしいんですよ。」


山口「あと、ツアーってずっとやっていって育っていくじゃないですか。こういう状況でライブがストップしたことで、良い面と悪い面があるんですよ。良い面を言うと、ツアーってずっとやっているから、この曲からこの曲の繋ぎはどうだったかなとか……やっているからそれでいいってなっちゃって、分からなくなってくるんですよ。客観的に感じられなくなるっていうか。でも、ちょっと時間を空けて見直したり、昔のライブ映像とかを見ると、もっとここをこうすればよかったなとか、ここの間はもう2秒あってもいいかなとか、ここは4小節減らそうよとか……アイディアが出てくるんですよ。だから次にやるときには、今までのライブをアップデートしてライブができる可能性がある。ただ、悪い面としては、(ツアーをやり続けて)繋がっていった流れが止まるわけだから、気持ち的にはまた1からになるんですよ。1からっていう気持ちの時って、メンタルもそうですけど、チーム全体の士気も高くないと、良い集中力を保てなくなるんですよね。あとは、今までのツアーの良かった部分を1回忘れているから、今まで良かったのにあの良い部分がなくなっちゃったとか、自分の中で感じることも出てくるだろうなって思う。あと、コロナウイルスの影響の中で歌うっていうことは、だんだんコロナウイルスの影響が出てきているなって思いながらライブをやっていた時とは違う再スタートだから、お客さんと自分との関係性みたいなところもすごく大事なところですよね。そこは未知ですね……ちょっと怖いなって思う。多分、ステージの上から見てみんなマスクをしていると思うから。で、マスクをしていない人がいたりすると、マスクして欲しいなって思うかもしれない……歌っている最中に。なんか違う雑念が入ってくるかもしれないですよね。」

職員「それは今までのライブで一度も考えたことがない話じゃないですか。」

山口「うん……あと、盛り上がりすぎてマスク下げたんだな、とか。そういう新しい感情が入ってくるから……。」

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今回は、授業冒頭の職員との雑談から、そのままコロナウイルスの話題が続きましたが、授業の時間も後半になってきました。今回はオンエアしたい楽曲がありますので、話題を切り替えます。

山口「そんな中、サンボマスターのトリビュートアルバムに参加したんですよ。これもまた、ビクターの山上さんっていう、サカナクション担当で上から30番目くらいに偉い人がいるんですけど。レーベルの担当ってひとつのミュージシャンだけじゃないって前に授業で話をしたじゃないですか……山上さんは、サンボマスターの担当もやっていて。アルバムのときに山上さんにはすごくお世話になったし、サンボマスターさんにもお世話になっているから、ぜひトリビュートやらせてくださいって僕が言ったんですよ。で、僕からするとね、ちょっといやらしい話ね……僕の中では、ある程度、サンボマスターさんのこの曲をやりたい(カバーしたい)って言ったらやらせてくれるのかなっていう気持ちでいたんですよ。いざ蓋を開けました……で、この曲がやりたいって言ったら、『その曲は他の人で決まってます!』って。じゃあ、この曲って言ったら、『その曲も他の人で決まっています!』って……え?僕がやる曲がないじゃないのよと。やっぱり自分が好きな曲じゃないとトリビュートできないじゃないですか。そしたら山上さんが、『もう後に引けない』って(笑)。メンバーに話しちゃったから、本人も喜んでいたと。ぜひやってほしいということで。じゃあ、僕はサンボマスターの中で、知らない曲をやることにして。山上さんがこの曲どう?って教えてくれたのが、「美しき人間の日々」だったんですよ。これを聴いて、山口(隆)さんさすがだなって。この曲を、NFの黒瀧節也さんと一緒に、サンボマスターらしくない感じにしていこうっていうコンセプトで一緒に作業をしました。聴いてもらいましょうか。」


♪ 美しき人間の日々 / Ichiro Yamaguchi+Setsuya Kurotaki


山口「今回は、言うてみれば、頭の雑談がそのままフルでの授業になってしまいましたね。」

職員「予定していた授業があったんですけど、飛びましたね。」

山口「こういうタイミングだから、こういう話になってしまって、申し訳ないんですけど。」

山口「今週日曜日、22日には、キズナ感謝祭 supported by 親子のワイモバ学割がYouTube LiveとLINE LIVEで午後2時より配信されます。キズナ感謝祭もコロナの影響を受けましたからね。その中でも、しっかりと校長を見送りたいなと思います。僕も公開授業パートに生登場します。遠山校長の勇姿を見届けて、一緒に10年間どうだったかとか、語り合おうと思います。僕も長いのでね。一緒に話をしていきたいと思います。」

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山口「あと、珍しく告知するよ。3月21日(土) NHK Eテレで、『ETV特集 ダビンチ・ミステリー〜知られざる“天才”の素顔〜』っていう、NHKスペシャルで前にやったのを、さらに掘り下げて、池上英洋先生っていう、東京造形大学の教授と2人で放送します。ダビンチに興味を持った人は、ぜひ観てみてください。モナリザは、風化して色が変わっているんですけど、もともとこんな色だったっていうのをシミュレーションしたものが出てくるので、ぜひ観てください。」


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