yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第百七十三話 運命を味方につける -物理学者 スティーブン・ホーキング-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第百七十三話運命を味方につける

今年3月14日、車椅子の天才物理学者が亡くなりました。
スティーブン・ホーキング博士。
一般相対性理論をさらに推し進め、宇宙とブラックホールの関係について、あるいは宇宙論から哲学に至るまで、学者のみならず、多くのひとに影響を与え続けました。
21歳で筋萎縮性側索硬化症、いわゆるALSを発症し、医師に余命は2年と宣告を受けましたが、それからおよそ55年間、精力的に科学者としての本分を全うしました。
彼は、あるインタビューでこんなふうに答えています。
「何かあったら、次の3つのことを思い出してください。
何か辛いことがあったら、まず星を見上げて、自分の足もとを見ないようにすること。
そして2番目に、仕事をあきらめないこと。仕事は、大切です。仕事はあなたに意義と生きる目的を与えてくれます。それがないと、人生は空っぽになってしまうんです。
最後、3番目はこうです。運よく愛を見つけられたなら、簡単に投げ捨てたりしないこと」
まさしく彼の人生は、その3つのことで成り立っていました。
理不尽な病にも、遥かかなたの星を見るように、希望を失わず、宇宙という果てしない課題に、一生の仕事として真摯に取り組みました。
病を発症したときに、ジェーンという女性に巡り合い、結婚したことで、愛について学んだと言います。
2014年、二人の関係は『博士と彼女のセオリー』という映画になりました。
彼自身の生き方は、彼が考えた人生の流儀をそのまま体現しているかのようです。
ホーキング博士は親日家としても知られ、六度の来日を果たし、東大の安田講堂で講演を行いました。
彼は、学生たちに呼びかけました。
「宇宙は、謎があるから面白い。なかなか結論にたどり着かないことを、どうか、面白がってください」
天才科学者・スティーブン・ホーキングが人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

車椅子の物理学者・スティーブン・ホーキングは、奇しくも、ガリレオ・ガリレイの没後300年の当日にあたる1942年1月8日、イギリス・オックスフォードに生まれた。
父は熱帯医学を学ぶ、医師。母の実家は病院だった。
最初の記憶は、保育園。
泣き叫んだ。
知らないひとの中に放り出されることが、ひたすら怖い。
あまりの異常な泣き方に、両親はホーキングを連れ帰るしかなかった。
ホーキングが育った町は、科学畑の研究者や大学関係の教授たちが多く暮らすところ。
保育園も小学校も先進的で、詰込み主義の教育ではなかった。
学校に行っても、何も教えてくれない。
ホーキングは、8歳になっても満足に読み書きができなかった。
時は戦時中。
同じ並びの数軒先に、ロケット弾が落ちたこともあった。
だが子どもにとっては、遊び場があればいい。
ホーキングは焼け跡で友達と走り回った。
幼い彼が最初に夢中になったのは、模型機関車。
それも、木でできたフェイクではなく、自力で走るもの。
ゼンマイ仕掛けを手に入れるが、ちゃんと走らない。
どうしても電動機関車が欲しくなる。
親戚から誕生日や洗礼式にもらったお金を、両親は郵便貯金にしていた。
それを黙って、下ろしてしまう。
ワクワクして家に持ち帰る。
走らせてみて、ガッカリした。
思うような速度で走ってくれない。
仕方なく、自分で新しくモーターを買ってくる。
改良に改良を重ね、試験運転を何度しても、結局ダメだった。
彼は子ども心に、悟った。
「ひとから与えられるもので、満足できるひとと、できないひとがいる。ボクは、できれば全部、自分でつくりたい!」

ホーキング博士は、幼い頃、模型機関車にはまった。
その次は、模型の飛行機、そして船。
手先は器用ではなかったが、こだわりだしたら自分をとめられなかった。
彼が望んだのは、「自分の意のままに動かせるもの」。
そのためには、仕組みを知ることが必要だった。
なぜ走るのか、どうして飛ぶのか、いかにして浮くのか。
物事には全て、原理があるはずだ。
それを手に入れれば、宇宙は、自分の手のひらの中にある。
グルグル線路を回る電気機関車を見ながら、彼は、科学に目覚めていった。
イギリスの学校は、はっきりした階層に分かれていた。
父はホーキングを、パブリック・スクールの名門、ウェストミンスター校に行かせようとした。
父自身、満足な中等教育を受けなかったので、後に苦労したことを悔んでいた。
ただ、家は決して裕福ではなかった。
奨学金を得るための資格審査の日。
ホーキングは体調を崩してしまう。
結果、ウェストミンスターに入ることはできなかったが、そんなことは関係なかった。
ホーキングは思っていた。
「要は、どこの学校を出たかではなく、そこで何をするかだ」。
運命を味方につけること。
それは、その場にいることを嘆くのではなく、その場で何ができるかを考えることだ。
学校では決して優秀ではなかった。
学習態度も決してよくはなく、ミミズがはったような字を書いて、教師を困らせた。
でも、ひとつのことに徹底的にこだわる彼をクラスメートはいつしか、こう呼ぶようになった。
「アインシュタイン」。

ホーキング博士が、オックスフォード大学からケンブリッジの大学院に行こうとする頃、体に異変を感じた。
思うように動かない。
あるとき、階段から落ちた。
医者は、笑ってこう言った。
「ビールを少し、控えるんだな」
しかし、精密検査をして、不治の病であることがわかった。
深い絶望感。
そして苛立ち。
「なんでよりによって、ボクなんだ? やりたいこと、やらなくちゃいけないことがたくさんあるのに」
人生の理不尽さに打ちのめされる。
検査入院しているときに、向かいのベッドにいる少年が、白血病で亡くなった。
彼は、いつも優しく微笑みかけてくれていた。
天使のような、少年。
この世には、自分より不遇なひとはたくさんいる。
今、おかれている環境を嘆く前に、まず、いまやれることをやろう。
そう思った。

気持ちがくじけそうになると、いつも、向かいのベッドにいた少年の笑顔を思い出した。
一般相対性理論と、宇宙論。
研究はその2つにしぼる。
余命を告げられたがために、人生に無駄がなくなった。
全て、いとおしい。
全て、自分の生きる意味につながった。
運命の原理を知った。
そう、それは、いつも自分次第。
宇宙も自分の人生も、あると思えば全て手のひらの中にある。

【ON AIR LIST】
ツァラトゥストラはかく語りき / Deodato
MORE THAN A FEELING / Boston
STARDUST / Nat King Cole
FANTASY / Earth, Wind & Fire

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけの豆乳鍋

今回は、寒くなってきたこの時期にぴったりの料理をご紹介します。

霜降りひらたけの豆乳鍋
カロリー
216kcal (1人分)
調理時間
30分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 白菜
  • 200g
  • かぶ
  • 200g
  • 小松菜
  • 1/2束
  • 人参(飾り)
  • 3cm
  • 豚バラスライス
  • 200g
  • 出汁
  • 500ml
  • 豆乳
  • 300cc
  • 味噌
  • 大さじ3
  • 白ごま
  • 適量
作り方
  • 1.
  • 白菜とかぶを一口大に切って下茹でする。小松菜・豚肉は食べやすい大きさに切っておく。人参は食べやすい大きさ、または飾り切りにする。
  • 2.
  • 鍋に出汁、豆乳、味噌、ごまを入れ、混ぜ合わせる。
  • 3.
  • (2)に(1)と小房に分けた霜降りひらたけを入れ、火にかける。
  • recipe LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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