yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第三百六十七話 明日はもっといいものをつくろう -【メモリアルイヤー篇】建築家 アントニ・ガウディ-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第三百六十七話明日はもっといいものをつくろう

今年、生誕170年を迎えた、スペインが誇る大建築家がいます。
アントニ・ガウディ。
世界遺産がひときわ多いスペインにあって、「アントニ・ガウディの作品群」という個人名で登録されている、唯一無二のレジェンドです。
最も有名な建築物は、「サグラダ・ファミリア」。
今からおよそ140年前に着工された、この偉大な作品は、いまだ完成していません。
建築にたずさわるスタッフに、毎日、ガウディは言いました。
「諸君! 明日はもっといいものをつくろうじゃないか!」
決して妥協しない彼の言動は、ときに大きな軋轢を生みましたが、ガウディは一歩もひきませんでした。
バルセロナの街に突如現れた、ある種、異様な建物。
それは、建築というより彫刻に近い、芸術作品のようです。
ガウディは、言いました。
「建築は光をあやつり、彫刻は光と遊ぶ」
サグラダ・ファミリアの内部に入れば、その言葉が理解できます。
そこに踊る光の粒は、細かな彫刻が演出した無数の穴。
天空に突き出す尖塔は、まるで未来に向けたメッセージのように、私たちの心を鼓舞してくれます。
幼い頃のガウディは、リウマチに苦しめられ、痛みとの格闘でした。
痛みは、結局誰とも分かち合えないことを知った彼は、幼心に悟るのです。
「明日はきっと少しはよくなっているはずだ。そう信じることで、なんとか今を乗り切っていこう」
病気の療養のため、母から引き離され、田舎に預けられたときも、「明日はきっとお母さんが迎えに来てくれる、きっと来てくれる」
そう願いながら、毎日を過ごしたと言います。
明日、明日、明日。
幼い頃から、ガウディは、明日に夢を見ることで生きてきたのです。
今も建築界に影響を与え続けるカタルーニャの至宝、アントニ・ガウディが人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

「サグラダ・ファミリア」で知られるアントニ・ガウディは、1852年6月25日、スペイン・カタルーニャ地方、タラゴナに生まれた。
祖父も父も、銅板を扱う職人だった。
家にはいつも銅板を打つ金属音が鳴り響いていた。
生まれてすぐに、田舎町リウドムスから都会のレウスに引っ越す。
ガウディは、虚弱体質だった。
やがてリウマチにかかる。
命は取り留めたものの、激しい関節の痛みに泣き叫ぶ。
熱は下がらず、生死の境をさまよった。
母は、末っ子のガウディを不憫に思い、ことさら可愛がった。
「もしかしたら、レウスの空気が合わないのかもしれない」
そう思った母は、我が子を、自然豊かなリウドムスの両親のもとに預けることを決意した。
ガウディは、母から引き離されることで、絶望を味わう。
自分の足で歩けないガウディは、ロバに乗ってリウドムスに向かった。
母は足しげく、我が子に会うため、リウドムスに通う。
それでも、ガウディの孤独は深まるばかりだった。
祖父の家に響く銅板を叩く音が、「絶望」という言葉と重なった。

アントニ・ガウディが幼少時代、リウマチの療養で過ごしたリウドムスには、一面、オリーブ畑が広がっていた。
地平線に落ちる太陽。
夕陽の圧倒的なオレンジに、心うたれた。
虫や動物、草木に池や川。
少しずつ、リウマチも癒えていく。
ただ、ひとたび都会のレウスに戻ると、病気は再発。
また大好きな母親と引き離された。
いっそ、ずっとリウドムスに預けられるほうが楽だったかもしれない。
希望を持たされ、絶望を味わい、また希望に心おどらせて…。
その繰り返しは、ガウディ少年に、この世の理不尽や不条理を教えることになった。
ただ、リウドムスの自然だけは裏切らなかった。
冬が終われば、花が咲き誇り、夏の陽射しがやってくる。
のちにガウディは言った。
「私にとって、自然は、学校そのものだった。
そこには、あらゆる色があり、あらゆる形が存在し、花びらや木々の成り立ちに思いもよらない創造物を発見した。
自然は、開かれた偉大な書物である」
天才・建築家、ガウディの感受性は、孤独と自然の中でゆっくりと育まれていった。

アントニ・ガウディは、リウマチも落ち着き、レウスの街の小学校に通った。
成績は決して良くはなく、唯一、工作だけは得意だった。
紙細工で家を作る、という宿題。
クラスメートは、ガウディが作った家に驚く。
フツウの家ではない。
家の中を木々が貫き、円形の大きな窓が人間の顔に見えた。
「変な家」
同級生にそうバカにされると、ガウディは言った。
「ただ、ボクはね、自分が住みたい家をつくっただけだよ」
学校から帰ると、ひたすら父の工房にいた。
銅板を打つ父の傍から離れない。
「何がそんなに面白いんだ?」
そう聞かれて、「お父さんが振り下ろすカナヅチで、銅板がいろんな形に変わっていくのが面白いんだ。さっきまで平べったい板だったのに、ほら、もう立ち上がってる」
おかしな子だと思いながら、父は、この息子を自分の後継者にしたいと思った。
同級生たちが、具体的な職業を将来の夢として口にする中、ガウディは、「立体的なものをつくるしごとがしたい」と言って、先生を困らせた。

立体的であれば、小さな箱でも庭に置く犬小屋でも何でもよかった。
ただ、一度作ったものも、毎日手を加え、形を変えていく。
明日はもっとすごいものを、明日はもっと自分が納得するものを。
そう願って。
誰もが成し遂げることのできない作品を創造したアントニ・ガウディは、ただ、明日を信じて、前に進み続けた。

【ON AIR LIST】
鳥の歌(カタロニア民謡) / 山下和仁(ギター)
ホブ・アレク・サレル・ジャン / バハグニ feat.ブイカ
コラソン / オマール・ソーサ&セク・ケイタ
バルセロナ / フレディ・マーキュリー&モンセラ・カバリエ

★今回の撮影は、「伊勢志摩 近鉄リゾート 志摩スペイン村」様にご協力いただきました。ありがとうございました。
営業時間など、詳しくは公式HPにてご確認ください。
伊勢志摩 近鉄リゾート 志摩スペイン村 HP
 

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと魚介の簡単パエリア

今回は、スペインの代表的な料理、パエリアをご紹介します。

霜降りひらたけと魚介の簡単パエリア
カロリー
375kcal (1人分)
調理時間
60分 ※炊飯時間を含む
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【4人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 玉ねぎ
  • 1/4個
  • にんにく
  • 1片
  • ムール貝
  • 4個
  • 白身魚
  • 100g
  • 海老
  • 50g
  • ピーマン
  • 1個
  • オリーブオイル
  • 大さじ2
  • 2合
  • 【A】サフラン
  • 0.1g
  • 【A】水
  • 大さじ2
  • 【B】固形コンソメ
  • 1個
  • 【B】水
  • 360ml
  • 少々
  • こしょう
  • 少々
  • レモン
  • 1/2個
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。ムール貝は足糸を切り、海老は背わたをとって殻をむいて軽く塩を振る。白身魚は一口大に切る。ピーマンはヘタと種をとり、2cm角に切る。
  • 2.
  • 玉ねぎとにんにくはみじん切りにする。
  • 3.
  • サフランは刻んで水につけ、よく色を出してから【B】と混ぜる。(いきなり固形ブイヨンを溶いたものと混ぜると色が出ないので注意)
  • 4.
  • フライパンにオリーブオイル(半量)を熱し、白身魚を焼いて、火が通ったら皿に取り出す。
  • 5.
  • (4)のフライパンを拭いたら残りのオリーブオイルを熱し、(2)と米を入れ、米がパラパラするまで炒める。
  • 6.
  • 炊飯器に(1)、(3)、(4)、(5)を入れ、普通に炊く。
  • 7.
  • 炊き上がったら、蒸らさずに器に盛り、レモンを添える。
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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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