yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第四百七話 できない、と言わない -【今年周年のレジェンド篇】ベーブ・ルース-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第四百七話できない、と言わない

WBC、ワールド・ベースボール・クラシックの記憶もそのままに、二刀流・大谷翔平の活躍は連日、ニュースをにぎわせています。
オオタニの偉業が報じられることで、再び、その伝説がクローズアップされているメジャーリーガーがいます。
ベーブ・ルース。
今年、没後75年を迎える彼の本名は、ジョージ・ハーマン・ルース・ジュニア。
ベーブは、ベイビーから来たニックネーム。
童顔、子どものように邪気がない笑顔、子どものようにやんちゃで、常識知らず。
ぷっくり太った体型も、ベーブという愛称にピッタリでした。
「子ども」というのは、ある意味、彼のキーワードかもしれません。
無類の子ども好き。
ベーブ・ルースは、デビューした当時から、球場に来た子どもたちにホットドッグをご馳走するなど、特別に、大切にしてきました。
子どもたちもまた、いつも彼のまわりに集まり、背中を叩いたり、お腹の肉をつまんだりして、ふざけあい、でも、試合になると、いきなりホームランをかっとばしてスタジアムから賞賛を浴びるベーブを、特別な大人として尊敬したのです。
メジャーリーグを代表する超有名選手になり、多忙になっても、ベーブは、養護施設や孤児院を足しげく訪れ、靴をプレゼントしたり、サインをしたり、抱き上げ、ハグを繰り返しました。
それは売名行為ではないかと揶揄されたこともありましたが、すぐに見当違いであるとわかりました。
どんな有名新聞やカリスマ雑誌のインタビューより、彼が子どもとの時間を優先したからです。
その姿は、球場で子どもたちが差し出すボールに丁寧にサインする、大谷翔平にかぶります。
ベーブ・ルースは、親の愛をほとんど知らずに育ちました。
7歳から、まるで捨てられるように全寮制の矯正学校に入れられ、家族の団欒を経験することがなかったのです。
そんな彼が、子どもたちに、常に言い続けたこと。
それは「できないと最初に言うな。なんでもできる、まずは、そこから始めるんだ」という言葉でした。
貧しさと孤独の淵からスポーツ界のレジェンドになったメジャーリーガー、ベーブ・ルースが人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

二刀流のレジェンド、ベーブ・ルースは、1895年2月6日、アメリカ、メリーランド州ボルチモアに生まれた。
ドイツ系移民の両親。母は病弱。父は酒場の店主。
一家は、酒場の2階で暮らした。
父は、昼から朝方まで、1日20時間以上働いたが、貧しかった。
ほとんど寝たきりの母と、ほとんど家にいない父。
ベーブ・ルースは、満足な躾や教育を受けることなく、幼少期を過ごす。
学校には行かず、路上をうろつく。
近所の不良仲間と悪事にふけった。
手がつけられない、やんちゃな子ども。
ただ、野球に興じているときだけ、笑顔になれた。
大きな打球を、裏の店の陳列棚に打ち込んだことがあった。
卵は、ぐちゃぐちゃ。
店主は、怒ってベーブ・ルースの家に怒鳴りこんだが、一家のあまりの貧しさと、ベーブ・ルースのボロボロな服を見て、何も言わずに帰ったという。
父は、ついに我が子の面倒は見きれないと判断。
7歳のとき、親がいない子や貧乏な子、犯罪に手を染めた不良少年が入る、全寮制の矯正学校に入れることにする。
ベーブ・ルースは、泣いて叫んだ。
「お父さん、ボクを捨てないで、お父さん、ボクは行きたくない!」
でも、父は彼を引きずるようにして連れていった。

そのセント・メアリー少年工業学校で、ベーブ・ルースに運命的な出会いが待っていた。

ベーブ・ルースが7歳で入った学校では、敬虔な修道士が教師を務めていた。
緑豊かな環境に、800人あまりの生徒が暮らす。
6時に起床し、勉強と裁縫などの作業。
自由時間は、夕食前のほんの1時間だけだった。
ベーブ・ルースは、勉強はさっぱりわからない。
洋服の仕立てなどの細かい手作業も苦手だった。
同級生にからかわれ、喧嘩になる。
人一倍体格がよかった彼は、常に標的にされ、心がすさんだ少年たちが襲いかかる。
いつも目立ってしまうので、不器用な彼が、神父に叱られ、罰を受けた。
学校を抜け出す計画を立てていたベーブの前に、ひとりの教師が現れた。マティアス神父。
背は高く、顔はムービースターのように整っている。
地底から湧き上がるような低い声は、他の神父とは違う説得力があった。
ある日、運動場で野球をしているベーブに、マティアスが尋ねた。
「打ったボールが、ホームランになる場合と、うまく飛ばない場合、何が違うか、わかりますか?」
ベーブがわからないと答えると、マティアスは、彼の頭に優しく手を置き、言った。
「バットを振るとき、ホームランになると信じているか、どうかです。
いいですか、ルース、できないと思ったら、できない。
反対に、やれると思ったことは、やれるんです」

ベーブ・ルースは、心からマティアス神父を尊敬した。
彼に褒められたくて、ホームランを打つ。
彼に認められたくて、投手としても頑張った。
貧しさや孤独、容姿や不器用さへのコンプレックスでこじれた心を、神父は本来の姿に戻してくれた。
ベーブ・ルースに、笑顔や優しさ、無邪気で明るい心が戻った。
セント・メアリー少年工業学校で過ごした12年間。
彼は、マティアスを、実の父のように慕った。

18歳のとき、野球部のエースだったベーブの試合を、偶然観ていたメジャーリーガーの口利きがきっかけで、いきなり契約が決まる。
ベーブ・ルースは、ある事実を知った。
自分がホームランを打つと、みんなが喜んでくれる。
自分が三振をとると、たくさんのひとが笑顔になる。
初めて、生きる意味に出会った。

東北・仙台の八木山動物公園に、ベーブ・ルースの銅像がある。
1934年、昭和9年に、アメリカ大リーグのオールスターチームが来日。
かつて野球場だったこの地に、ベーブ・ルースもやってきた。
その八木山球場で、ベーブ・ルースは、来日初ホームランを打った。
野球場はなくなってしまったが、銅像は残り、動物公園には、子どもたちの歓声が響き渡る。
二刀流の天才、ベーブ・ルースは、今も子どもたちの笑い声を聴いている。
子どもたちの輝く未来を願いながら。

【ON AIR LIST】
野球場に連れてって / ドクター・ジョン
パウンド・ケーキ / レスター・ヤング&カウント・ベイシー楽団
ストレイトン・アップ・アンド・フライ・ライト / ダイアナ・クラール
ユー・キャン・ドゥ・イット / クール&ザ・ギャング

★今回の撮影は、「八木山動物公園フジサキの杜(仙台市八木山動物公園)」様にご協力いただきました。ありがとうございました。
アクセスなど、詳しくは公式HPにてご確認ください。
八木山動物公園フジサキの杜(仙台市八木山動物公園) HP
 

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと枝豆の胡麻和え

今回は、6月頃から旬を迎える食材、枝豆を使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけと枝豆の胡麻和え
カロリー
119kcal (1人分)
調理時間
15分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 枝豆(さやつき)
  • 100g
  • 新玉ねぎ
  • 1/4個
  • 【A】塩
  • 小さじ1/3
  • 【A】すりごま
  • 大さじ3
  • 【A】ごま油
  • 小さじ1
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐし、新玉ねぎは薄切りにする。
  • 2.
  • 水400ml(分量外)を沸騰させ、霜降りひらたけを1分ほど茹でザルにあげる。
  • 3.
  • 枝豆に大さじ1と1/2弱の塩をすりこみ、(2)の熱湯に水200ml(分量外)を加え、沸騰したら枝豆を4分ほど茹でザルにあげ、粗熱がとれたら、さやからはずす。
  • 4.
  • ボウルに(2)、(3)、新玉ねぎ、【A】を入れ、ざっくり和える。
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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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